社会福祉法人 全国社会福祉協議会・全国母子生活支援施設協議会
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策定の経緯および各項目の内容と考え方について

平成29年5月12日
全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会

1.経緯

○ 全母協では、全社児福発第277号(平成18年10月2日付)『全国母子生活支援施設協議会「倫理綱領」策定に伴う第1次パブリックコメント(各施設からのご意見)募集について』により、全国の母子生活支援施設に「倫理綱領」(第1次案)に対するパブリックコメントを募集しました。
○ また、10月18日〜20日に開催された『第50回全国母子生活支援施設研究大会』では、「全母協50周年記念フォーラム」において、パネリスト及び大会参加者から、倫理綱領策定に関わる多彩な議論と意見をいただきました。
○ 第1次案の際にいただいたパブリックコメント等の意見を概括すると、倫理綱領策定の意義、及び第1次案の内容については、概ね肯定的な意見をいただきました。
○ その上で、倫理綱領の表現や、策定に至るまでの経過を大切にすること(特に職員間や都道府県・各ブロックにおける十分な討議など)等、貴重なご意見をいただきました。
○ これらの意見・議論の内容と成果をふまえ、今回全母協では、「倫理綱領」(第1次案)の内容を再度検討しました。
○ 内容の再検討にあたっては、山崎美貴子氏(当時:神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部長・教授 現:神奈川県立保健福祉大学顧問・名誉教授/全母協中央推薦協議員)の助言をいただきながら、全母協拡大正副会長会議(平成18年12月21日/平成19年1月16日)で検討を進めました。
○ これらの検討をもとに、倫理綱領(第2次案)について、全国の母子生活支援施設に平成19年2月末を締切に再度パブリックコメントを募集しました。
○ 第2次パブリックコメントでは、相当練りあげられたものになっており、この内容で施行し、実践との関係で一定期間後見直せばよいのではないかという意見が多く寄せられ、第2次案がおおむね受けとめられたものと考えられました。
○ こうした経緯を経て、最終的に全母協協議員総会(平成19年4月25日開催)において採択され、決定の運びとなりました。
○ 「全国母子生活支援施設協議会倫理綱領」(平成19年度策定)は、母子生活支援施設がその運営を通じてめざすものを明確にするとともに、その実現のために役員・職員の倫理的な規範、行動規範、さらに施設運営の規範を定めたものであることから、平成27年度に、「私たちのめざす母子生活支援施設(ビジョン)」の策定、生活困窮者自立支援制度施行、平成28年度児童福祉法改正等をふまえ、母と子の最善の利益を保障するために、引き続き山崎美貴子氏の助言をいただき、倫理綱領の見直すとともに、その具現化に向けて取り組むこととした。
  時 期 内 容
検討第1回
(H27年度)
平成27年
8月26日(水)
第2回総務委員会での主な意見
○運営指針、ビジョンとの整合性を図り、修正箇所案を総務委員会(メール確認)として拡大正副へ上程する
○ただし、運営指針、ビジョンも、倫理綱領をもとに具現化され策定されていることを忘れずに進める
○例えば「地域協働」や「運営、資質の向上」の第三者評価受審を追加など、文言を中心にみていく
○19年策定時の助言者山崎美貴子先生にもご協力を仰ぐことについても検討が必要
第2回
(H27年度)
10月14日(水) 第2回常任協議員会・第3回総務委員会合同会議 修正作業にかかるスケジュール案の確認
第3回
(H27年度)
10月22日(月) 第4回拡大正副会長会(社会福祉懇談会) 
第4回
(H27年度)
平成28年
2月5日(金)
第4回総務委員会修正案の検討
渡辺会長代行、総務委員長の見直し案
第5回
(H27年度)
3月7日(月) 第5回拡大正副会長会
(修正案の確認)
第6回
(H27年度)
3月18日(金) 第3回常任協議員会
修正案の確認
第7回
(H28年度)
4月28日(木) 第1回常任協議員会
修正案の確認
第8回
(H28年度)
5月9日(月) 協議員総会
検討状況の報告
第9回
(H28年度)
6月8日(水) 第1回総務委員会、山崎美貴子先生に同委員会へご参画いただき、見直し作業を進める
第10回
(H28年度)
8月22日(月) 第2回総務委員会、山崎美貴子先生に同委員会へご参画いただき、見直し作業を進める
第11回
(H28年度)
9月23日(金) 第3回拡大正副会長会議において見直し案の確定
第12回
(H28年度)
10月18日(火) 第2回常任協議員会・第3回総務委員会合同会議において、全国大会に報告する見直し案を確認
第13回
(H28年度)
10月19日(水)
〜20日(木)
第60回全国大会2日目午前に説明の時間を設け、 検討状況の報告
第14回
(H28年度)
平成29年
2月24日(金)
(第60回全国大会後の見直し案パブコメなし) 第3回総務委員会、山崎美貴子先生にご参画。変更の項目に基づき、「経緯」「解説」見直し作業を進める
第15回
(H28年度)
3月14日(火) 第4回常任協議員会 経緯・解説等修正案の確認
第16回
(H29年度)
4月26日(水) 第1回拡大正副会長会議、第1回常任協議員会 最終案の確認
第17回
(H28年度)
5月12日(金) H29年度協議員総会にて倫理綱領の改定が承認

2.各項目の内容と考え方について

<前 文>
 母子生活支援施設に携わるすべての役員・職員(以下、「私たち」という。)は、母と子の権利擁護と生活の拠点として、子どもを育み、子どもが育つことを保障し、安定した生活の営みを支えます。
  そのために私たちは、母と子の主体性を尊重した自立への歩みを支えるとともに、常に職員の研鑽と資質向上に励み、公正で公平な施設運営を心がけ、母と子および地域社会から信頼される施設として支援を行うことをめざします。
【解説】
○ 前文では、母子生活支援施設に携わるすべての役員・職員が「何をめざすのか」を表現しました。
○ 母と子の両者の権利擁護と生活の拠点としての役割を担うことを明記するとともに、児童福祉施設として、子どもが育つ権利が保障され、「家庭」において心身ともに健やかに養育されるよう、母の、いわゆる「子育て・子育ち」としての養育(一人の人格の主体として、育み育つ)を保障する考え方を明確にしました。
○ あわせて、さまざまな課題や困難により母子生活支援施設にたどり着いた母と子に、「癒し」と「生活の回復の場」を持っていただいた上で、安定した生活の営みを形成していただくために支援を行う、支援の基本姿勢を表現しています。
○ そのために、「母と子の主体性を尊重した自立への歩みを支える」とし、利用者主体の自立支援に向けた取り組みを進めることを宣言しています。
○ 平成28年8月第2回総務委員会では、倫理綱領の主体や対象を明記すべきではないかという意見があり、主体は誰なのか、主語を「私たち」として、役員・職員一人ひとりを、行動を起こす主体と位置づけ、行動責任の帰属先を明確にしました。
○ 子育ては、家族が全部責任を負うことではないということ、社会全体で子どもを育むことから考えると「家族と共に、社会的責任によって、子どもは最善の利益で守られている」ということを補足します。
○ それぞれの母子生活支援施設の役員・職員一人ひとりがこの倫理綱領を自分自身のこととして理解し、日々の実践に活かすために、この倫理綱領の内容を盛り込んだ各法人・施設としての職員の行動規範、施設運営の基本方針、支援方法を定め、信頼される施設運営をめざすことが大切です。
<基本理念>
1. 私たちは、母と子の権利と尊厳を擁護します。
【解説】
○ これまでの倫理綱領策定をめぐる検討会議の議論では、倫理綱領に「利用者の主体性」「利用者中心」の理念を含めるとともに、母子家庭や女性が、雇用・進学等、社会的な構造により排除されやすい実態をふまえ、母子生活支援施設が母子家庭・ひとり親家庭にとってどのような施設であるのか、その理念を表現することの必要性が議論されました。
○ 本項目は、<基本理念>として、これらの理念を端的に表現したものです。
○ 本項目にある「権利」とは、憲法25条(生存権)を表します。国に対する、母と子の安全確保、及び健康で文化的な最低限度の生活を受けるための権利保障と、そのために母子生活支援施設が果たすべき役割を表現しています。
○ また、「尊厳」とは、憲法13条(幸福追求権)、14条(法の下の平等)を表します。人が一人ひとりの持つ力、生きがいを追求する利用者主体の考え方を表現するとともに、それらを母子生活支援施設が擁護することを宣言しています。
○ 「権利」と「尊厳」という2つの表現を入れることで、憲法の考え方に沿った母子家庭の権利と利用者主体の考え方、そして母子生活支援施設の拠るべき考え方・支援理念を表現しています。
○ 平成28年児童福祉法改正法では、「児童が主体で、児童の最善の利益が明文化され、児童は適正な教育を受け、健やかな成長、発達や自立が図られ保障されること」等の児童福祉法理念が示されました。「家庭の位置づけ」が重視されて、子どもの権利擁護の視点と、家庭を視野に入れた支援ができることは、母子生活支援施設の強みです。また、「児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う」とされ、ひとり親家庭を含めた子育て家庭への社会的支援が一層求められていることを、私たちはしっかりと受け止めることが重要です。
〔日本国憲法〕
第25条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
   2   国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
第13条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第14条  すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 (2.3.略)
<パートナーシップ>
2. 私たちは、母と子の願いや要望を受けとめ、安心・安全な環境の中で、母と子の生活課題への取り組みを支援し、安定した生活の営みを形成することをめざします。
【解説】
○ 私たちが、子育て・子育ちへの支援(母と子それぞれへの支援)・家族支援を行うこと、そして生活の営みの回復・支援を図ることを理念としていることを、上記の文により表現しています。
○ その上で、支援の考え方として、あくまで主役は「利用者である母と子」であり、私たちは、母と子の安定した生活の営みの形成を支援するための伴走者であることを、本項目で表現しました。
○ そのため、本項目のタイトルは「パートナーシップ」としています。
<自立支援>
3. 私たちは、母と子の自立に向けた考えを尊重し、その歩みをともにしながら、母と子を支えることをめざします。
【解説】
○ 「自立支援」に関する施策が進められていますが、倫理綱領をめぐる議論の中では、「経済的自立」のみを持って「自立」とすることについては、必ずしもあてはまらないのではないか、という意見が出されました。
○ そのため、利用者それぞれの自立のあり方と、それに向けた母子生活支援施設の自立支援のあり方を、「母と子の自立に向けた考えを尊重し」としました。
○ 経済的自立をめざす母と子、生活の安定と地域での生活をめざす母と子等、利用者それぞれの自立への考えを大切にしながら、利用者の生活スキル・生活の質の向上をめざして、私たちはその実現に向けて寄り添うことを表現しています。
○ インケアで母と子が、私たちと豊かな信頼関係を築きあえることによって、母子生活支援施設がその母と子にとっての「居場所」となることができます。さらに「自分はここに居る」という自らの存在確認ができたときに、伴走者としての援助関係が展開されます。母と子が、その周りの社会から孤立しないよう、母子生活支援施設が「実家」のようになることが、母子生活支援施設の機能強化につながります。
<人権侵害防止>
4. 私たちは、法令を遵守し、母と子への人権侵害を許しません。
【解説】
○ 女性と児童に対する人権侵害の最たるものとして、DV・児童虐待等の暴力の問題があります。母子生活支援施設では、新規入所者の約半数が、DVを理由として入所に至る状況があります(平成18年度「全母協実態調査」)。これらの人権侵害行為に対する母子生活支援施設の姿勢を、上記項目で表現しました。
○ また、本「倫理綱領」は、母子生活支援施設内に掲示等することで、利用者である母と子が直接見る機会が考えられます。そのため「DV」「児童虐待」という表現を直接用いずに、人権侵害防止に向けた私たちの決意を表す肯定的な表現としています。
○ なお人権侵害については、職員をはじめ、関係者からの二次被害等の人権侵害も許されないことは当然です。
○ あわせて、個人情報保護法の施行により、利用者の方々のプライバシー・個人情報保護も課題となっており、各施設における対応も必要とされています。そのため、施設において求められるコンプライアンス(法令遵守)を明記し、地域に信頼される施設運営と利用者支援を進めることを表現しました。
<運営・資質の向上>
5. 私たちは、母と子への最適な支援と、よりよい施設運営をめざすとともに、 自己点検をはかり、職員自身も自らを見つめ直し、専門性の向上に努めます。
【解説】
○ 利用者支援を常に向上させる上からも、施設運営の自己点検と、職員のたえざる資質向上は大きな課題です。
○ 現在の母子生活支援施設には、多様で困難な課題を抱えた母と子の利用が増加しており、精神障害のある母と子へのケア、DV被害や外国人の母と子に対する支援、課題解決のための施設内外のネットワーク構築力等、職員が獲得しなければならない支援のスキルも多様になっています。
○ それらをふまえ、それぞれの利用者の状況に応じた最適な支援を進めるため、施設としての努力姿勢を明らかにした上で、そのために常に必要となる施設としての自己点検(自己評価)の重要性を表現しました。
○ あわせて、職員自身の専門性向上については、利用者への個別的な支援を通じて、常に支援のあり方を見つめ直す機会を持つことを表現するとともに、職場内研修や外部研修・学習の機会を通じて、職員集団としても、支援力の向上に努力することを表現しています。
○ 職員は、豊かな人間性と倫理観を備え、専門性の向上を図り続けることが必要になります。期待されるレベルに到達していくことが求められますが、施設長は、さらに各階層にいる職員一人ひとりの人材育成計画を検討し、年間の研修計画を作成することが求められています。
○ 平成24年度から実施している第三者評価・自己評価の評価基準では、職員の教育・育成の評価項目を3つに定め、その中で「職員一人ひとりの育成を図っているか」について重視しています。
<アフターケア>
6. 私たちは、母と子の退所後インケアからアフターケアをつなぐため、退所計画を作成し、アウトリーチするとともに、地域の社会資源を組み込んだネットワークによる切れ目のない支援を提供することをめざします。
【解説】
○ 私たちは、インケアからアフターケアに至るまで、母親への支援、子どもへの支援、母と子の関係性への支援をするにあたって、切れ目のない継続的で専門的な家族支援の充実を図ります。母子生活支援施設単体で支援をする時代ではなく、地域のさまざまな社会資源を巻き込み、創り、連携していく地域ネットワークを活用したアウトリーチへの取り組みに努めることを表現しています。
○ 退所後のアフターケアが効果的に行われるよう、それぞれの母と子の退所後の計画を作成し、地域ネットワークと連続する切れ目のない支援の必要性を表しました。
○ 平成28年度児童福祉法改正では、地域のつながりの希薄化等により、妊産婦・母親の孤立感や負担感が高まっていくなか、妊娠期から子育て期までの支援、母と子の支援においては、地域のさまざまな社会資源と連携し、地域ネットワークのなかで、自立に向けた支援をすすめていくことが求められています。
<地域と協働>
7. 私たちは、関係機関や団体とネットワーク形成を図りながら、資源の開発や創生による子育て支援地域づくりを進め、ひとり親家庭のニーズに合わせた展開をすることをめざします。
【解説】
○ 私たちは、施設のみにとどまらず、行政や医療福祉団体、ボランティア・NPO団体をはじめ、幅広い地域の関係機関・団体と協働して母子家庭、ひとり親家庭の支援を行うことを表現しています。
○ さらに、母子生活支援施設としての支援は、サテライト(小規模分園型母子生活支援施設)、ショートスティ(子育て短期支援事業)、トワイライトスティなどは代表的なものですが、これらの支援も父子家庭を含むひとり親家庭のニーズに合わせて展開することを表現しています。
○ そして、私たちには、地域のひとり親家庭の子どもの学習支援も視野に入れるなど、地域で暮らす父子世帯を含むすべてのひとり親家庭が社会から孤立することなく、子どもの育ちが守られ、貧困の連鎖を断ち切れるような支援の展開を率先して推進する役割があることをしっかりと認識することが強く求めらています。
○ 母子生活支援施設のが単体での支援では、十分でない場合もあります。また、適切な利用しやすい資源が見つけにくい場合もあります。単に資源につなげるのであれば、それだけでは、地域福祉とは言えません。私たちは、そのひとり親家庭のニーズに対応する資源を開発する必要がある場合には、その地域における静態的資源(今ある資源)や動態的資源(その人に必要な資源をつくる)の可能性を点検しつつ、資源を創生することも今後検討していくことが必要です。
○ 母子生活支援施設は、地域社会の大事な財産・資源の一つであり、私たちが、地域福祉と個別支援とを一体的に支援をすすめることを考えていくこともこの表現には含まれています。