社会福祉法人 全国社会福祉協議会・全国母子生活支援施設協議会
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策定の経緯および各項目の内容と考え方について

1.経緯

○ 全母協では、全社児福発第277号(平成18年10月2日付)『全国母子生活支援施設協議会「倫理綱領」策定に伴う第1次パブリックコメント(各施設からのご意見)募集について』により、全国の母子生活支援施設に「倫理綱領」(第1次案)に対するパブリックコメントを募集しました。
○ また、平成18年10月18日〜20日に開催された『第50回全国母子生活支援施設研究大会』では、「全母協50周年記念フォーラム」において、パネリスト及び大会参加者から、倫理綱領策定に関わる多彩な議論と意見をいただきました。
○ 第1次案の際にいただいたパブリックコメント等の意見を概括すると、倫理綱領策定の意義、及び第1次案の内容については、概ね肯定的な意見をいただきました。
○ その上で、倫理綱領の表現や、策定に至るまでの経過を大切にすること(特に職員間や都道府県・各ブロックにおける十分な討議など)等、貴重なご意見をいただきました。
○ これらの意見・議論の内容と成果をふまえ、今回全母協では、「倫理綱領」(第1次案)の内容を再度検討しました。
○ 内容の再検討にあたっては、山崎美貴子氏(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部長・教授/全母協中央推薦協議員)の助言をいただきながら、全母協拡大正副会長会議(平成18年12月21日/平成19年1月16日)で検討を進めました。
○ これらの検討をもとに、倫理綱領(第2次案)について、全国の母子生活支援施設に平成19年2月末を締切に再度パブリックコメントを募集しました。
○ 第2次パブリックコメントでは、相当練りあげられたものになっており、この内容で施行し、実践との関係で一定期間後見直せばよいのではないかという意見が多く寄せられ、第2次案がおおむね受けとめられたものと考えられました。
○ こうした経緯を経て、最終的に全母協協議員総会(平成19年4月25日)において採択され、決定の運びとなりました。

2.各項目の内容と考え方について

<前 文>
 母子生活支援施設は、母と子の権利擁護と生活の拠点として、子どもを育み、子どもが育つことを保障し、安定した生活の営みを支えます。
 そのために母子生活支援施設は、母と子の主体性を尊重した自立への歩みを支えるとともに、常に職員の研鑽と資質向上に励み、公正で公平な施設運営を心がけ、母と子および地域社会から信頼される施設として支援を行うことをめざします。
【解説】
○ 前文では、母子生活支援施設が「何をめざすのか」を表現しました。
○ 母子生活支援施設が、母と子の両者の権利擁護と生活の拠点としての役割を担うことを明記するとともに、児童福祉施設として、子どもが育ち、育つ、いわゆる「子育て・子育ち」としての養育(一人の人格の主体として、育み育つ)を保障する考え方を明確にしました。
○ あわせて、さまざまな課題や困難により母子生活支援施設にたどり着いた母子に、「癒し」と「生活の回復の場」を持っていただいた上で、安定した生活の営みを形成していただくために支援を行う、支援の基本姿勢を表現しています。
○ そのために、「母と子の主体性を尊重した自立への歩みを支える」との表現のもと、利用者主体の自立支援に向けた取り組みを進めることを宣言しています。
○ また、職員の行動規範、施設運営の規範も明記し、地域に信頼される施設運営をめざすことを表現しています。
<基本理念>
1. 母子生活支援施設は、母と子の権利と尊厳を擁護します。
【解説】
○ これまでの倫理綱領策定をめぐる検討会議の議論では、倫理綱領に「利用者の主体性」「利用者中心」の理念を含めるとともに、母子家庭や女性が、雇用・進学等、社会的な構造により排除されやすい実態をふまえ、母子生活支援施設が母子家庭・ひとり親家庭にとってどのような施設であるのか、その理念を表現することの必要性が議論されました。
○ 本項目は、<基本理念>として、これらの理念を端的に表現したものです。
○ 本項目にある「権利」とは、憲法25条(生存権)を表します。国に対する、母子の安全確保、及び健康で文化的な最低限度の生活を受けるための権利保障と、そのために母子生活支援施設が果たすべき役割を表現しています。
○ また、「尊厳」とは、憲法13条(幸福追求権)、14条(法の下の平等)を表します。人が一人ひとりの持つ力、生きがいを追求する利用者主体の考え方を表現するとともに、それらを母子生活支援施設が擁護することを宣言しています。
○ 「権利」と「尊厳」という2つの表現を入れることで、憲法の考え方に沿った母子家庭の権利と利用者主体の考え方、そして母子生活支援施設の拠るべき考え方・支援理念を表しています。
〔日本国憲法〕
第25条  すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
   2   国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
第13条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする
第14条  すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 (2.3.略)
<パートナーシップ>
2. 母子生活支援施設は、母と子の願いや要望を受けとめ、安心・安全な環境の中で、母と子の生活課題への取り組みを支援し、安定した生活の営みを形成することをめざします。
【解説】
○ 母子生活支援施設が、子育て・子育ちへの支援(母と子それぞれへの支援)・家族支援を行うこと、そして生活の営みの回復・支援を図ることを理念としていることを、上記の文により表現しています。
○ その上で、支援の考え方として、あくまで主役は「利用者である母と子」であり、母子生活支援施設は、母と子の安定した生活の営みの形成を支援するための伴走者であることを、本項目で表現しました。
○ そのため、本項目のタイトルは「パートナーシップ」としています。
<自立支援>
3. 母子生活支援施設は、母と子の自立に向けた考えを尊重し、その歩みをともにしながら、母と子を支えることをめざします。
【解説】
○ 「自立支援」に関する施策が進められていますが、倫理綱領をめぐる議論の中では、「経済的自立」のみを持って「自立」とすることについては、必ずしもあてはまらないのではないか、という意見が出されました。
○ そのため、利用者それぞれの自立のあり方と、それに向けた母子生活支援施設の自立支援のあり方を、「母と子の自立に向けた考えを尊重し」と表現しました。
○ 経済的自立をめざす母子、生活の安定と地域での生活をめざす母子等、利用者それぞれの自立への考えを大切にしながら、利用者の生活スキル・生活の質の向上をめざして、母子生活支援施設はその実現に向けて寄り添うことを、上記の表現で表しています。
<人権侵害防止>
4. 母子生活支援施設は、法令を遵守し、母と子への人権侵害を許しません。
【解説】
○ 女性と児童に対する人権侵害の最たるものとして、DV・児童虐待等の暴力の問題があります。母子生活支援施設では、新規入所者の約半数が、DVを理由として入所に至る状況です(平成18年度「全母協実態調査」)。これらの人権侵害行為に対する母子生活支援施設の姿勢を、上記項目で表現しました。
○ また、本「倫理綱領」は、策定後、母子生活支援施設内に掲示等することで、利用者である母子が直接見る機会が考えられます。そのため「DV」「児童虐待」という表現を直接用いずに、人権侵害防止に向けた母子生活支援施設の決意を表す肯定的な表現としています。
○ なお人権侵害については、母子生活支援施設職員をはじめ、関係者からの二次被害等の人権侵害も許されないことは当然です。
○ あわせて、個人情報保護法の施行により、利用者の方々のプライバシー・個人情報保護も課題となっており、各施設における対応も必要とされています。そのため、施設において求められるコンプライアンス(法令遵守)を明記し、地域に信頼される施設運営と利用者支援を進めることを表現しました。
<運営・資質の向上>
5. 母子生活支援施設は、母と子への最適な支援と、よりよい施設運営をめざすとともに、自己点検をはかり、職員自身も自らを見つめ直し、専門性の向上に努めます。
【解説】
○ 利用者支援を常に向上させる上からも、施設運営の自己点検と、職員のたえざる資質向上は大きな課題です。
○ 特に、現在の母子生活支援施設には、多様で困難な課題を抱えた母子の利用が増加しており、精神障害のある母子へのケア、DV被害や外国人の母子に対する支援、課題解決のための施設内外のネットワーク構築力等、職員が獲得しなければならない支援のスキルも多様になっています。
○ それらをふまえ、それぞれの利用者の状況に応じた最適な支援を進めるため、施設としての努力姿勢を明らかにした上で、そのために常に必要となる施設としての自己点検(自己評価)の重要性を表現しました。
○ あわせて、職員自身の専門性向上については、利用者への個別的な支援を通じて、常に支援のあり方を見つめ直す機会を持つことを表現するとともに、職場内研修や外部研修・学習の機会を通じて、職員集団としても、支援力量の向上に努力することを表現しています。
<アフターケア>
6. 母子生活支援施設は、母と子の退所後も、地域での生活の営みを見守り、関わりを持ち、生活を支えることをめざします。
【解説】
○ 母子生活支援施設は、子育て支援と子どもの育ちの拠点として存在する社会的施設であるとともに、利用者のアフターケアにも積極的に関わることを明確にし、「退所後も常に見守り、関わりを持ちます」という利用者へのメッセージを含めた表現としています。
○ 第1次案では、「生活サポート」という表現を使用していましたが、「支援」と「サポート」という言葉が同じ倫理綱領上に並ぶため、表現を整理しました。
<地域協働>
7. 母子生活支援施設は、関係機関や団体とネットワークを形成し、母と子・ひとり親家庭とともに歩み、住みよい地域社会づくりを進めることをめざします。
【解説】
○ 母子生活支援施設は、施設のみにとどまらず、行政や医療福祉団体、ボランティア・NPO団体をはじめ、幅広い地域の関係機関・団体と協働して母子・ひとり親家庭の支援を行うことを表しています。
○ 第1次案では、「関係機関と連携して母と子の支援をめざします」と表現していましたが、父子家庭も含めた「ひとり親家庭」としての概念を明記するとともに、項目全体をより具体的に表現しました。
○ なお、文章中の「母と子」は、母子生活支援施設利用者をイメージし、「ひとり親家庭」は、地域で生活するひとり親家庭をイメージしています。現在母子生活支援施設を利用されている母子への支援はもとより、地域のひとり親支援にあたっては、母子生活支援施設の力量にとどまらず、ネットワークの力で課題解決を進める姿勢を明確にしています。
○ また母子生活支援施設関係者は、ネットワークの形成を通して、母子家庭・ひとり親家庭(単身女性も含め)が、地域社会から排除(暮らしにくさ/経済的・社会的にも)されず、誰もが住みよい地域社会づくりに向けた視点を持ちながら、日々の実践を展開することをめざすことを表しています。